青年Aは東京に来てからのここ数ヶ月を思い返す。様々な出会いや発見があった;妖怪のような市役所職員、ロッキーのテーマソングを鳴らし続けるスーパーマケット、執拗にインターホンを鳴らし続けるN◯K関係者、家畜のような扱いを受ける通勤電車。
色々あったが、精神的な面では大阪にいた頃より安定していることを自覚できている。これからはどうなるかわからない。自分は進んでいるのか、停滞しているのか、平凡になっていないか。また数カ月後、自分に問い直そうと決意するのであった。
青年Aの日々
Sorry, Japanese text only. 特定の人たちに向けて,青年Aの日々を記しています.フィクションを多分に含みます.
2016年5月31日火曜日
2016年3月26日土曜日
誰がために鐘は鳴る
夜行バスに揺られながら,Aは明日からの東京での生活に思いを馳せていた.
この日の日中は,大阪で住んでいた部屋の最後の清掃をしていたため,Aは,全身ユニクロの汚れたジャージ姿だ.剃り忘れた髭が,斑な芝生の様に口周りに生えている.Aの前の座席で妻のMは,ノーメイクのママ,口を開けて,心地よさそうに寝ている.彼女の私生活での一人称は,ウチもしくはMeである.
別に今までもラジオもテレビもある生活であったが,これからの東京の生活に一抹の不安を覚える門出だな,と不意にAに思った.普段は洗練されていない私生活になんのコンプレックスも感じないタイプのAも,夜行バスでの独特で余所余所しい雰囲気にアンニュイな気分になったのであった.
幾許かの睡眠をとった後,東京駅前に着いたことを,バス内のチャイムがなりアナウンスが伝えた.
この日の日中は,大阪で住んでいた部屋の最後の清掃をしていたため,Aは,全身ユニクロの汚れたジャージ姿だ.剃り忘れた髭が,斑な芝生の様に口周りに生えている.Aの前の座席で妻のMは,ノーメイクのママ,口を開けて,心地よさそうに寝ている.彼女の私生活での一人称は,ウチもしくはMeである.
別に今までもラジオもテレビもある生活であったが,これからの東京の生活に一抹の不安を覚える門出だな,と不意にAに思った.普段は洗練されていない私生活になんのコンプレックスも感じないタイプのAも,夜行バスでの独特で余所余所しい雰囲気にアンニュイな気分になったのであった.
幾許かの睡眠をとった後,東京駅前に着いたことを,バス内のチャイムがなりアナウンスが伝えた.
2016年3月10日木曜日
暮雲は暗雲
この日,Aの表情は浮かれなかった.その原因は夕方から行われる大学の研究室の人々で開催される送別会にあった.
送り出される立場の一人であるAは,送別会では別れの挨拶をする機会が設けられるのだろうと予想し,憂鬱な気分でいた.Aにとって研究室での生活は一概に良かったと思えるものでなく,取り繕う嘘を得意としない性格が挨拶の言葉を見つけさせないでいた.
かつてAはある教授から害悪と連呼され,大学を辞めろとヒステリックに叫ばれたことがある.その時に言い返せなかったことをAは引きずっていた.そして結果的に,その教授の言ったとおりの大学を退学するという選択肢を選んだことに対し,悔しさがあったのだ.
送別会には件の教授も出席する.別れの挨拶で,彼をギャフンと言わせれないか,Aは良からぬことを考えたり考えなかったりしていた.雨が振りそうな重たい空の下,Aは自転車に乗り送別会の会場へと向かうのであった.
送り出される立場の一人であるAは,送別会では別れの挨拶をする機会が設けられるのだろうと予想し,憂鬱な気分でいた.Aにとって研究室での生活は一概に良かったと思えるものでなく,取り繕う嘘を得意としない性格が挨拶の言葉を見つけさせないでいた.
かつてAはある教授から害悪と連呼され,大学を辞めろとヒステリックに叫ばれたことがある.その時に言い返せなかったことをAは引きずっていた.そして結果的に,その教授の言ったとおりの大学を退学するという選択肢を選んだことに対し,悔しさがあったのだ.
送別会には件の教授も出席する.別れの挨拶で,彼をギャフンと言わせれないか,Aは良からぬことを考えたり考えなかったりしていた.雨が振りそうな重たい空の下,Aは自転車に乗り送別会の会場へと向かうのであった.
2016年3月1日火曜日
青年A,29歳になる
その日,Aは誕生日を迎え29歳となった.夕食後には妻が用意してくれたイチゴのショートケーキを食し,妻と一緒に誕生日を迎えれたというささやかな幸せをケーキと一緒にかみしめていた.
思えば辛い一年だった,Aは昨日までの一年間を思い返しそうつぶやいた.不登校だった中学時代とどちらが辛かっただろうか.そんなことは意味のない比較だなと我に返り,炬燵から腰を上げ風呂へ向かった.
髪の毛は自然乾燥させている.それが彼の流儀だ.
就職が決まり来月からの新生活に不安と期待を胸に,風呂から上がった彼は床につく.東京で楽しく過ごすためには,29歳はどんな年になるのだろうか,誕生日に退学届を出す羽目になるとは,などと様々な思いに耽りながら,そして翌日の寝癖を覚悟しながら,彼は目をつぶった.
思えば辛い一年だった,Aは昨日までの一年間を思い返しそうつぶやいた.不登校だった中学時代とどちらが辛かっただろうか.そんなことは意味のない比較だなと我に返り,炬燵から腰を上げ風呂へ向かった.
髪の毛は自然乾燥させている.それが彼の流儀だ.
就職が決まり来月からの新生活に不安と期待を胸に,風呂から上がった彼は床につく.東京で楽しく過ごすためには,29歳はどんな年になるのだろうか,誕生日に退学届を出す羽目になるとは,などと様々な思いに耽りながら,そして翌日の寝癖を覚悟しながら,彼は目をつぶった.
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